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句読記号の訳し方
日本語は漢字の影響もあって、文章を句読点で区切るという観念が乏しく、せいぜい句点(。)、読点(、)、たまにダッシュ(-)ぐらいしか使いません。しかもこれについて明確な規則もなく、書く人の気分に左右されることが多いといえます。
一方英語ではピリオド(終止符)、疑問符、感嘆符はもとより、コンマ(,)、セミコロン(;)、コロン(:)、ダッシュなどかなりの句読記号があり、それぞれ一定の条件や規則があります。このため英文で句読記号に接した場合には相応の注意が必要となります。
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1. The function of the heart is to pump
blood through the body.
2. The past and the future are functions of the present. |
(a)
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コンマ(,)
英語のコンマは息つぎや思想の中断を示すものではなく(Yes, I do. No, thank you. などは一気に読む)、文の各部分の文法的な相互関係をはっきり示したり、文の意味を明確にするために使うものです。したがってコンマの有無によって文の意味が大きく変わることもあります。たとえば、
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1. He was paining a portrait smoking a pipe.
2. He was painting a portrait, smoking a pipe. |
この文で、1. は「彼はパイプをくゆらせている肖像を描いていた」、2. は「彼はパイプをくゆらせながら肖像を描いていた」となり、コンマのあるなしでパイプをくゆらせている人物が異なってきます。 |
(b)
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セミコロン(;)
セミコロンはコンマとピリオドの中間ぐらいの「停止」を意味し、ピリオドで2つの独立した文に分けるには両者のつながりが近く、コンマでつなぐには意味が離れている場合によく用いられます。
これはand、but、orなどを用いないで、簡潔に両者の関係を表そうとするときに適した記号で、これによって対比が鮮明になります。訳出にあたっても、きりっとして緊張感を出せるように工夫するとよいでしょう。
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I do not say that these reports are untrue; I simply
say that I do not believe them.
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これらの報告が正しくないと言っているのではありません。ただ信じないと言っているだけです) |
In ancient times, rope was made by hand;
nowadays, however, it is made by machine.
(古代、ロープは手で作られていた。だが、今日では機械で作られている) |
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(c)
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コロン(:)
コロンはセミコロンよりは大きく、ピリオドよりは小さい「停止」を表す記号といえます。コロンは重文の節と節の間に接続詞がなく、しかもあとの節が前の節に対してその結果を述べたり、理由などを説明する場合によく用いられます。訳し方としては、2つの節の間に関係を示す適当なつなぎ言葉を入れてみるとよいでしょう。
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It is growing dark: the sun has set.
(だんだん暗くなってきた、太陽が沈んだからだ)
He has many favorite amusements: painting pictures, playing baseball, and watching
movies on TV.
( |
彼には好きな娯楽がいくつもある、〔たとえば〕絵を描いたり、野球をしたり、テレビ映画を見たりすることである) |
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(d)
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ダッシュ(-)
ダッシュは突然の思考のとぎれを表すもので、前に述べたことを修正したり、話題を急に変えたり、あるいは強調やためらいなどを示すときによく用いられます。日本語に訳す場合は状況に合わせて適当なことばを挿入してみたり、あるいは原文通りそのままダッシュを使うことも可能です。
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I wonder how long it’s been since I last saw him. Ten
years maybe - no, longer.
(彼と最後に会ってからどのぐらいだろう、10年かな、待てよ、いやもっとだ)
Health, friends, position - all are gone.
(健康も、友も、地位も、えーいなにもかもなくなってしまった)
He is - or was - a reporter on
your paper.
(その男はおたくの新聞の記者です - と言うよりは「だった」のです) |
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